html> BLAZE UP Nitro ▲indexへ戻る ▲感想一覧へ戻る戻る

沙耶の唄感想

 発売が発表された当初、沙耶の唄は医大を舞台にした四人の恋物語である、という触れ込みであった。
「普通の恋愛ゲーなんて・・・」と思いつつも、「ニトロならまた面白いことやってくれるに違いない」という期待もあった。
そしてその触れ込みは突如急展開、「沙耶の唄はホラーアドベンチャーである」と。
まさしく「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」という気分だった。
果たしてその期待はどうなったのか。
実際にプレイした感想を如何に述べてみる。

おおざっぱな解説
 端的に言うと、「怖い。グロい。(グロテスクで気持ち悪い)エロそうで実はエロくない。悲しくて切ない」という感じにまとめられると思う
ストーリーは今までのニトロの作品の中でもっとも短い。お手軽といえばお手軽だろう。エンディングは3つだが、どれも素晴らしかった。
今までのニトロのように派手なバトルはない。でも一箇所だけ燃えるシーンがある。
そんな感じでよいだろうか。買おうかどうか迷ってる人はグロテスクな表現が平気かどうかで心配なのかもしれないが、ソフトフォーカス処理などで表現をやわらげてくれるオプションをゲーム開始時に選択できるので大丈夫だと思う。
僕はあえて標準の修正処理なしでプレイした。
そしてエンディングを迎えるまで決して理解できなかった事だが、この物語はとてつもない純愛の話である。
以下、クリア後の感動を分かち合いたい人もしくはプレイする気の無い人のためのネタバレ的感想
(反転じゃありません。ずーっと下にスクロールしてください)










































キャラクター別感想
匂坂郁紀(さきさか ふみのり)
 ゲームを始める前、この主人公は徐々に狂気に犯されていくのだと思っていたのだが、ゲーム開始初っ端から驚かされた。
まともに見えない世界、まともに聞こえない世界。かつての友人が化け物に見える現実。僕ならば一日で発狂して自殺を選んだだろう。
まあ彼も自殺を選ぼうとしたときに始めて沙耶に出会って救われるのだが・・・
彼に対する評価は選ぶエンディングによって多少変わる。だがいずれにせよ彼を批判する気にはなれない。誰しもそうするであろうと思われる選択だからだ。
だが今までのニトロの主人公と比べると実際物語の都合上インパクトは薄いなあ。と思うのはまだ読みが浅いのだろうか。

沙耶(さや)
 もう、最初に彼女が登場したシーンまでの話の流れで、彼女が人外の存在であることは想像に易かった。
初っ端からエロシーンに突入というニトロにあるまじき展開だったが、どう考えてもあのシーンは怖い。はっきり言って((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル、勃つわきゃねえって感じで。
最初にエンディングにたどり着いたときは、まだ彼女の愛が理解できなかった。奥涯雅彦の手記を解読するエンディングを見ていなかったからである。
あっちのエンディングを見れば如何に沙耶が孤独で、その身の上ゆえに郁紀を愛するに至ったかがわかる。
沙耶の全体像が画面に表示されることが無い、というのはある意味救いだ。やはり生理的嫌悪というものを考えると人間として彼女を肯定できないだろう。
しかし郁紀のような境遇であれば、もしかするとあのエンディングのように「声を聞かせてくれないか」と心から言うことがあるかもしれない。

戸尾耕司(とのお こうじ)
 今回の一番の被害者だろうか。ある意味別視点主人公と化すキャラクター。
最初にまっとうな選択肢を選んでいった結果、彼だけが生き残るエンディングにたどり着いた。
最後の郁紀と耕司が戦うシーンはなんとも不思議な感覚で見ていた。どちらにも正義があるのである。
普通の人間なら明らかに狂気に走った郁紀を肯定できないだろうが、そこまで郁紀の視点で物語を読んでいたこともあってか同情が入るのである。
結局あの時一人だけ生き残ってしまったのは最悪だったかもしれない。
凉子先生の幻覚が出てきたところで「生きてたっ?!」とちょっと期待しちゃったじゃないか。
まあ、あそこで殺されてしまっても彼にとっては最悪であることに変わりは無いのだが。

高畠青海(たかはた おうみ)
 せっかくキャラが立っていたのに生かされる事無く速攻いなくなってしまうキャラ。
ちょっとあんまりじゃないですかねー。
しかし沙耶もなんでまた襲って食っちゃったんでしょう?口封じの意味もあったのかなあ。

津久葉瑶(つくば よう)
 かわいそうっていうか、かける言葉も無い。
耕司の電話に出たときの会話、あまりに酷すぎる。そして彼女の末路。
おぞましいにも限度というものがあろう。
で、改造されちゃう前に沙耶にやられちゃってますが・・・沙耶が雌なのは雄から遺伝情報を取得するのに雌であることがやりやすいからというだけ?このとき雄みたいなんですけど。
学習によって人間でないことに劣等感を持っていたことがわかるおぞましくも悲しいエピソードではありましたが。

丹保凉子(たんぼ りょうこ)
 今回唯一の燃えキャラ。
井戸に降りて来る直前に声が聞こえたときは「誰だ?展開からして凉子先生だというのは間違いないはずだが・・・」というところで意表を突かれた。
まさに虚淵的瓢箪から駒、の典型パターンであろう。
この裏面が出る前から注目度No.1のキャラだったのだが、ここらの一連のエピソードでハロワにおける純子さんと同等の位置づけを確保した。
切り詰めたショットガンなんて粗野な武器が出てくるあたりも辛抱堪らんですたい!(なんでいきなり九州弁か)という感じ。
死に際が一番カッコイイというのはもうなんと言いますかね・・・
凉子先生燃えーっ!と叫べば一件落着か。


その他キャラクター

奥涯雅彦(おうがい まさひこ)
 沙耶の唄の世界でクトゥルー神話やっちゃった人。
今回のマッドサイエンティストは書き残したメモだけでの登場、に近い感じだったなあ。
でも最高で最悪にやばい感じ。取り返しの付かないやばいことをやっておいてその知識欲のためだけに悪魔に魂を売り渡しているホンモノのマッドサイエンティストだ。
その志、まさに天晴れ。でも現実にそんな人がいるのは勘弁な。

となりの鈴見さん
 あー、最悪な最後を迎えてしまった人。
気が狂って家族殺して沙耶をレイプしちゃいますが、いやあ恐ろしい。何が恐ろしいって、実際のところは普通の人間がバケモノ相手に表現しがたいことをしてるわけですよ。
いずれにしても、郁紀と同じく自分の体については不快感を示していないのだがちょっとご都合主義な感じがしないでもない。
「臭い、たまらなく自分が臭い!こんな醜い姿の自分には耐えられないっ!」とか発狂しそうなもんですが。


総評

 最初はとても怖かった。気持ち悪かった。でも先が気になって止めることが出来なかった。
届いたのをすぐにプレイしたくて夕食の前に30分ほどやったのはやばかった。
「じつはこの食事は自分には普通に見えるが、実際は・・・」なんてことを想像しながら飯を食った。でも普通に食べられたあたり、けっこう自分はホラー耐性あるんだなあと思ったけども。
とりあえずプレイ中は寒かった!気温のせいだけじゃない。やはり恐怖で寒かったのである。
しかし最初にたどり着いた耕司の生き残るエンディングで死に掛けの沙耶が郁紀に這い寄るシーンで違和感。バケモノ退治に成功したはずなのに、なんだろうこの感じは。
そしてセーブデータを読み直して沙耶と郁紀が別れるエンディングへ。
ああ、なんか沙耶に同情してきた自分がいる。
普通の精神に戻った郁紀からは、ただの醜いバケモノにしか見えず、声もまともに聞こえないからと携帯に文字を打ち込んでの会話が泣けた。
エンディング近くで流れるSILENT SORROWがまた情感を盛り上げるのである。ヴァイオリンの旋律ってすげぇ。
そして、最後に凉子先生に連絡しないで耕司が死に、沙耶が種を蒔くエンディング。
沙耶が死んじゃうのは納得できないけど、命を賭した生殖活動なんだなああれは。
人間としての尊厳ゆえ、人でなくなった右手を切り捨てちゃう凉子先生燃え。
そして手記から読み取れる奥涯雅彦の狂気。
果たして「美しく」なった世界で郁紀は生きているのだろうか?
現実に世界がグロテスクに変わっていく状況で人類は本当に沙耶という侵略者に負けてしまうのか。たぶん敵わないんだろうなあ。
そういえばこの話、冒頭でマイクロマシン治療とか出てくるSF要素もあるんだった。
人類の科学力がマイクロマシンを操るほどでも、沙耶の力は尋常じゃないから。

システム面ではサウンドライブラリーがあって、しかも鬼哭街のときはウィンドウのフォーカスが外れると音楽消えちゃったんだけど、今回はBGMにできる。
まあ、サントラ出たらサントラ買うけど。
メッセージログ見るのがめんどくさいのは相変わらず改善されない様子。
細かいことだけど、マウスのホイールで速攻戻って読めると良いのになあ。
それ以外には別段文句は無いです。

音楽は・・・やはりSILENT SORROWに一票。
そしてウィルスドクターの曲として作られたはずの「ガラスのくつ」がエンディング曲に。
「沙耶の唄」より印象深いなあ。ちなみにどちらの唄も微妙にフェードインしていてエンディングの演出的にはVery Goodだと思うデス。
BGMは全体的に不気味な曲が多いので聞き込むのを避けたい所。でも穏やかな曲とかは純粋に癒される。
実際ホラー映画というと、こちらの心拍数を上げるような音楽が定番な気がするのだが、(たとえばジョーズとか。あ、あれはパニック映画か?)突然金切り声を上げるようなBGMというよりも不気味さやグロテスクさ、不安をを引き立てるようなおどろおどろしい曲が多いという印象だった。(実際はそうでもない)
ま、音楽の感想はサントラが出てからゆっくり。

ともかくニトロはまたこんな面白いもの作って、また次回を期待してしまうではないですか。期待してますよニトロプラスの皆さん。


そうだっ!!!!稲田どこに居たっ!?

▲indexへ戻る ▲感想一覧へ戻る戻る
(C)since2003 Efin keci All Rights Reserved.