天使ノ二挺拳銃感想
久しぶりのニトロの新作。ほぼ一年ぶりとなる。
天使というテーマはとても好きなジャンルで、なんか羽が生えただけでキレイなイメージがつきまとい神秘的である。 でも、やっぱニトロだし、なんだかシティ・オブ・エンジェルぽいな、と思っていたら「シティ・オブ・エンジェル」自体が天使ノ二挺拳銃のビジュアルモチーフである「ベルリン・天使の詩」へのオマージュだったりするわけで。 体験版をプレイする以前の段階では「なんだか敵がショボい」という印象。主人公が天使で、悪役ぽいのが人間だけなら楽勝じゃないか。悪魔でもがっつり出てこないのかね、と思っていた。 他に事前情報としてキャッチしていたのは、主題歌に「ワタナベ」の曲が採用されたということ。 ワタナベは、ZIZZのドラマー「佐々木しげそ」氏が参加しているインディーズバンドで、一度ライブを聴きに行った限りでは特別好みではなかった為、音楽による僕のファーストインプレッションはやっぱり「並」であった。 ちなみに去年末の「Phantomメモリアルライブ」でシークレットゲストとして出演したワタナベの評判は上々だったようである。 以下、クリア後の感動を分かち合いたい人もしくはプレイする気の無い人のためのネタバレ的感想 (反転じゃありません。ずーっと下にスクロールしてください) キャラクター別感想 ヴィム 二挺拳銃の天使。そこに深い意味があるとは思っていなかったんだけどこれがまた一本とられた感じ。 に、してもちょっとものを話して喋るの下手な人だな。実際その立場だったらそうなってしまうんだろうか。 「俺は、天使だ」漫才のボケかと。「見ればわかるから」とか。 歴代ニトロの主人公中でもかなり淡白な顔立ちかもしれない。 とにかく序盤は人間に干渉できないので歯がゆい主人公。どうにかならんのか。 よくよく考えてみるとそんなに感情移入出来んかったなあ・・・ アンリ ツンデレ。いや、そんなにデレでもなかった気がするけど。印象的にはツンメソ? アンリENDか小巻ENDかの選択肢はちとあんまりでないか?と思ったり。 「天使は基本的に人間を愛することが出来ない」という情報を得るまでは「なんでこんな冷たいんだ」とも思ったりしたが、渋々納得という感じ。感情移入しにくい世界設定なんだよな。ジェイに裏切られた件のエピソードはちょっと無理を感じる部分もあったなあ。 小巻ルートの最後とか、風子ルートの最後とかのアンリはとてもよかった。 ただアンリルートのエンディングがあんまりな結末なんで寂しかった。よくわかんなかったし。流れる歌「I Bress Thy Life」はよかったけど。 ペーター ちょっと間抜けな名前のこの天使、なんでいきなりヴィムにレイプシーンを見せたりするんだろう?もしかして人間を嫌っていて物語の黒幕だったりするんかね?とか思ってましたがすげぇカッコイイキャラでした。 ただ、後半で明かされる「天使は基本的に人間を愛することが出来ない」という事実。 愛せないって事は憎むことも出来ないわけで、なんの感慨もなく人間世界を見下ろしていたんだろうなと。 「嘘」についてはミスリーディングな部分もあったんだろうが、やっぱりペーターらしくて良かった。 一番格好良かったのはやっぱ風子ルートのラストかな。半分黒くなりかけの翼を広げた背中が格好良すぎる。 ジェイ 今回一等の悪役。つか不憫だな。でも彼の場合ペーター曰く「純粋過ぎ」らしいのだが、一方的な愛情は見えたものの、渡部香織からどういう風に愛されたのかは読み取れなかった。やっぱりジェイの一方的な思いこみだったのだろうか。 元天使というより堕天使の二つ名が似合う。異形天使があんなに醜いのもきっとジェイの歪みっぷりの反映なんだろうなと思ったり。 渡部風子(わたべふうこ) DV(ドメスティックヴァイオレンス:家庭内暴力)で意識不明になっている幽体の少女。どうもDVについて実感がないせいか、あまり感情移入できなかったキャラではある。 でもエンディングはよかった。どうやってはての浜(らしきところ)まで行ったのかは謎。 渡部小巻(わたべこまき) 強い女性。今回マッドサイエンティストが登場しなかったけど、彼女が唯一科学者ぽいキャラクターだったかもしれない。 小巻だったらヴィムが惚れるのもわかるかなあと思ったり。 ウェイトレスのバイトより警備員のバイトの方がかわいいと思ったりしたのは僕だけでしょうか。 急ぎ足で読み進めたせいかもしれないが、彼女のルートのエンディングで唯一泣けた。あの産声のシーンでじわっと来た。 その他キャラクター 渡部一斉(わたべいっせい) DVな人。これ、ほんとわかんなくて困った。「小巻、ワシを嫌わんでくれ」という心の叫びをヴィムが聞いたとき「あ、これでも人間なんだ」とか思ったけど。不器用もここまで行くとさっぱりわかんない。 劇中に登場するサチとかもそうだけど、こういう暴力男に惚れてしまう女というのも現実に居るわけで、どうしてなんでしょうかねえ。 小巻ルートの最後だけはちょっと許す。ほんとに罪滅ぼしだなあ。 新沼よしみ(にいぬまよしみ) えらい強いオカマ。一斉同様、小巻ルートの最後でだけ彼の純粋な思いを聴いた気がする。この世界の悪党ってのはみんなそうなんだろうか。あのシーンが無かったら永劫地獄に落ちろなキャラだったんだけど、カンダタの蜘蛛の糸って感じなシーンであった。無論、許すつもりは無いがヴィムのセリフと同じ気分にはなった。 サム バカでバカ力。感想としては新沼に同じく。 総評 レイプシーンが多くて凹みました。「正直美味いッス」は語り継がれるバカ台詞なんじゃねっすか。その分悪党どもに憎しみが沸きましたが。その類のシーンは飛ばしたけど気分の良いものじゃないね。 一方この世界の、天使の謎。ちょっと生物学SFで「パラサイト・イブ」を思い出しました。 ちょっと無理があるけどこういう設定ってやっぱり好きだな。 ただ、後半に畳み掛けるようにキャラクターがぼろぼろネタ晴らしするみたいに喋るのは盛り上がりに欠ける。 今回、カタルシスを刺激するような音楽があまり無かったのは残念。歌ものにしても、やはりインディーズ曲の使いまわしではしっくりこないものもあるのか。 BGMにしても、たとえばRoulette。これ展開部が「あー!なんでそっから盛り上がらないかな!?」と歯がゆい思いをしたり。 盛り上がるべき所でしっくり噛み合わないという曲が多かった反面、基本的にピアノ曲は綺麗だなと思った。 佳人残影、はちょっと和風な感じで一応渡部一斉のテーマ曲ぽいんだけどこれは好き。演歌ロック? あんまり書くとサントラレポで書く事なくなるので曲についてはこのへんで。 ボリュームは丁度良いんじゃないでしょうか。もっと長くてもうまく引っ張ってくれるなら僕は一向に構いませんが、序盤からの「未練」との戦いはちょっと盛り上がらないなあというのが体験版から製品版までやってずっと思っていた事。 異形天使が出てきて「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」って感じだったけど、それまでの戦闘はどうもしっくりこなかった感じ。 新システムでもっとカッコイイ戦闘シーンが再現できるかとおもいきや、逆にまどろっこしくて帯に短したすきに長しという感じだったかも。 なにより、スピード感がイマイチだったかなと。読むべきところが画面中を点々とするのはあまり効果的に使われていなかったな。小巻とヴィムの問答の部分くらいだったか。 で、曲のタイトルがわかってるように、今回も沙耶の歌から引き続きサウンドコレクションが収録されていたり(但し、歌ものはショートバージョンです)ようやくホイールでバックログが見れたり(ちょっとまだ使い勝手が悪い気がしますが)若干良くなったかな、と。 結局世界が滅びるとかそれに近い状況までいっちゃたたりして「また無駄にスケールがでかい話に・・・」と思ったり。嫌いじゃないんだけど毎度毎度そうくるとちょっと食傷気味な気も。 ニトロにしてはちょっとイマイチ。あんまり期待していなかったのでこんなもんかな、という感じです。 |